起業家ファーストが支援するジュノ・バイオは、膣マイクロバイオームをより深く理解したい女性のための家庭用検査キットを発売した。同時に、女性の健康に関するさらなる研究にデータを提供する。
膣マイクロバイオームとは、膣内に自然に生息する微生物やバクテリアの集団を指します。膣マイクロバイオームの多様性は、女性の健康状態に影響を与えると考えられています。例えば、細菌性膣炎の再発や性感染症の感染リスクの上昇、さらには早産や不妊症などです。しかし、女性の健康問題に関する研究は歴史的に不足しており、何が起こっているのかを完全に理解するには、まだ長い道のりが残されています。(そして、不健康なバランスを修正するためにどのように介入すべきか、という点についても。)
そこが Juno Bio が参入したい部分です。
2018年に設立された英国のスタートアップ企業は昨年、米国で1,000人以上の女性からサンプルを収集し、膣マイクロバイオームに関するデータのリポジトリを構築する研究を実施しました。この初期データセットは、本日発売される市販の膣マイクロバイオーム検査キットの基盤となっており、価格は149ドル(送料無料)です。
検査料金を支払った女性は、郵送で検査キットを受け取ります。その後、自宅で検体を採取します。綿棒のような綿棒を膣壁に約20秒間当て、付属のチューブ(安定剤入り)に封入し、Juno Bio社に郵送して分析を受けます。
サンプルが処理されると、ユーザーはオンラインでログインして結果を確認するよう求められ、データについて話し合うためにジュノバイオの「膣コーチ」との1対1の通話を予約するオプションも提供されます。
このスタートアップが、どのようなサービスを提供しているのかを慎重に明示していることは強調する価値がある。
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同社のウェブサイト上の免責事項には、検査は「現在、健康目的のみに使用されることを目的としている」と記載されており、さらに「当社が提供する検査は、病気の診断や治療を目的としたものではなく、医師の診察の代わりとなるものでもありません」と付け加えている。
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ジュノバイオ社は、この検査が今のところ純粋に商業的な提供であることを認めているが、当初の市場焦点である米国を皮切りに、将来的にはこの分野での臨床的意思決定に役立てることができるよう「規制対象バージョン」の開発に取り組んでいると述べている(ただし、検査キットは英国でも入手可能)。
「もちろん、医師の代わりになるわけではありません」と、CEO兼共同創業者のハナ・ジャネブダー氏はTechCrunchとの電話会議で述べた。「ジュノスタディに参加したり、検査を予約したりする女性は、大きく分けて2つのグループに分かれます。1つ目は、自分の健康全般に積極的になりたい、自分の体についてもっと知りたいという女性です。そして、これは自分の腸内細菌について、そしてそれが膣の健康やpH値などにどのような影響を与えるかを知るための最良の方法の一つです。」
「他の女性は、細菌性膣炎や感染症を繰り返し経験している可能性があり、その原因を詳しく知りたいと思っています。そのため、彼女は膣マイクロバイオームの包括的な全体像を把握したいと考えています。なぜなら、既存の診断方法で細菌性膣炎の原因を今すぐに突き止めようとしても、必ずしも最適な診断方法とは限りません。ですから、まずは診断から始めるべきであり、何か問題があると思ったら必ず医師の診察を受けるべきですが、多くの女性にとって、これは健康維持のために非常に重要な情報源なのです。」
「例えば、アメリカでは女性の10%が細菌性膣炎を再発性に患っています。これは膣マイクロバイオームの病態の一つに過ぎませんが、医学界で最も再発率の高い疾患の一つです」と彼女は付け加えます。「この分野の診断が不十分なことも一因です。」
ジェーンブダー氏によると、このスタートアップの投資家のもう1社はライフサイエンス大手のイルミナで、サンプルの分析に使用しているDNA配列解析技術を提供している。
「これは、次世代シーケンシング技術をベースとした、初めての包括的な膣マイクロバイオーム検査キットです」と彼女は検査キットについて語る。「膣検査自体は以前から存在していましたが、次世代シーケンシングを実際に活用した人はいませんでした。次世代シーケンシングは、膣内に存在するすべての微生物の全体像を真に把握できる技術です。そして、それがA) 膣マイクロバイオームとそれが女性の生活、生殖能力、健康に与える影響を解明し、B) 女性にそれらの微生物の全体像を伝えるために必要なのです。」
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「膣マイクロバイオームに関連する疾患、例えばBV(細菌性膣炎)、再発性酵母感染症、さらには骨盤内炎症性疾患のような下流疾患などは、歴史的に十分に解明されていませんでした。そのため、これまでの診断法では、女性がいつ、どのような疾患に罹患しているのか、そして最適な治療法は何なのかを[判断するのに]不十分でした」と彼女は付け加えます。
ジャネブダール氏は、乳酸菌が優勢な膣内微生物叢は健康的であるというのがこれまでの科学的理解だが、最近の研究ではより微妙な理解が必要であることが示唆されていると述べている。
「文献で明らかになったのは、必ずしもそうではないかもしれないということです。乳酸菌の種類も重要です。また、例えば白人女性とアフリカ系アメリカ人女性では、膣マイクロバイオームと健康状態の間にも非常に重要な違いがあります」と彼女は指摘する。
彼女は生物学の学位と生化学工学の修士号を取得しており、マイクロバイオーム科学を専門としています。研究分野での経験を通して、女性の健康に関する研究には大きなギャップがあることに気づいたそうです。

「腸内マイクロバイオームや土壌マイクロバイオーム、そして考えられる限りの地中のあらゆるマイクロバイオームに関する研究や事業、商業化が爆発的に進む一方で、膣マイクロバイオームは比較的無視されてきたことに、本当に衝撃を受けました」と彼女は、2017年から2018年にかけてのスタートアップのきっかけを振り返りながら語る。
「本当に衝撃を受けました。なぜなら、あらゆるマイクロバイオームの中で、膣マイクロバイオームは最もアクセスしやすく、女性の生活を改善できる可能性のある症状と最も関連が深いのに、これらの症状を抱える女性が非常に多くいたからです。本当に驚きました。一体何が起こっているのでしょう? なぜこれほどまでに無視されているのでしょうか?」と彼女は付け加えた。「これは改善されなければなりません。」
「アフガニスタン人女性として、女性の権利、女性が無視されているという事実、そして女性に関する医療保健研究が軽視されてきたという事実は、私の実際の経験の核心でもあります。」
ジャネブダー氏によると、ジュノ・バイオの最終的な目標は、問題のある不均衡を修正するために使用できる「微生物介入」を提供できるように十分なデータと理解を集めることだ。
最も悲しいことの一つは…微生物介入は効果があるかもしれないのに、それが曖昧なプロバイオティクスやコンブチャの世界に限られているため、その真の可能性が十分に認識されていないことです。そして、私たちと似た腸内微生物叢の分野で、今年初めて腸内微生物介入の第3相承認が見られるようになったことは、本当に喜ばしいことです。膣内もそれに似ていると思います。そして、これはまさにジュノーのデータセットが解き放つであろうものです。
ジュノ・バイオのリポジトリに膣マイクロバイオームデータを寄付するためにお金を払う人は、そのデータが「匿名化」されると約束されているが、年齢や民族など、一部の個別のデータポイントへのリンクは保持されることは明らかだ。
このスタートアップのプライバシーポリシーは、こちらでご覧いただけます。そこには、「当社が研究で使用する情報は、多くの場合、個人が特定される可能性を最小限に抑えるために、複数の被験者グループにわたって要約、集約、または結合されます」と書かれています。
「研究やその他の目的で個人レベルの個人情報を使用する必要がある場合、当社はお客様に連絡し、そのようなその他の使用に適用される特定の同意を取得します」と付け加えている。
ティアは女性向けのホリスティックヘルスクリニックとバーチャルサービスのネットワークを構築するために2400万ドル以上を獲得した。
Juno Bio は、米国国立衛生研究所のヒトマイクロバイオームプロジェクトの一環として行われた 2 つの研究、膣ヒトマイクロバイオームプロジェクト (VaHMP) とマルチオミックマイクロバイオーム研究妊娠イニシアチブ (MOMS PI) の主任研究員であった Gregory Buck 博士のアドバイスを受けています。
検査キットの発売に関する声明の中で、バック氏は次のように述べています。「これまでの研究では膣マイクロバイオームの特徴を明らかにしてきましたが、これらの研究は多くの場合、対象集団の規模が限られており、限られた遺伝子配列しか利用しておらず、メタデータも不足しています。その結果、現在の研究では、膣関連微生物に関するデータと包括的な株バンクが不足しています。私はキャリアの多くを女性生殖器のマイクロバイオーム研究に捧げてきましたが、この膣マイクロバイオーム検査が、膣の健康と関連問題に関する将来の研究のための、最も豊富なデータリポジトリの一つとなると確信しています。それだけでなく、膣の健康に関する偏見をより良い方向に変えることにも役立つでしょう。」