AIデザインツールや生成モデルの学習に使用されるコンテンツの急増に対して、アーティストからは強い反発が寄せられているものの、クリエイティブワーク向けソフトウェアを開発する企業は、ツールキットにAIを組み込んでいます。これは、AIがいかに急速に重要性を増してきたかを示す兆候です。顧客が何を言おうと、グラフィックデザインソフトウェアメーカーは、何らかの形でAIを実装しなければ生き残れないと考えているようです。
この戦略をさらに強化した最新の企業がCanvaです。同社は木曜日、AIアシスタント、プロンプト付きアプリ作成機能、スプレッドシートのサポート、AIを活用した編集ツールなど、一連の新しいAI機能を自社プラットフォームに追加すると発表しました。
AIでベイクする
Canva AIと呼ばれる同社のAIアシスタントは、ユーザーの指示に従って画像を作成することから、ソーシャルメディア用の販促資料や印刷用のモックアップといったデザインアイデアの考案まで、さまざまなタスクを実行できます。原稿の作成やドキュメントの作成も可能です。
また、「Canva Code」と呼ばれる新しいツールを活用することで、アシスタントはインタラクティブマップやカスタム計算機などのミニアプリを作成し、デザインに組み込むことも可能です。オーストラリアのデザイン会社Canvaの共同創業者兼最高製品責任者であるキャメロン・アダムス氏がTechCrunchに語ったところによると、この機能はAnthropicと提携して開発されたとのことです。

「長年にわたり、私たちはチームにインタラクティブなプロトタイプの作成を奨励してきました。静的なモックアップでは、Canvaでユーザーに提供したい体験を真に表現できないからです。Canva社内のチームがプロトタイピングにAIを多用しているのを目にするようになりました。そこで、AIを外部化し、誰もが簡単にコーディングしてインタラクティブな体験を作れるようにすることを考えました」とアダムズ氏は語ります。
念のため言っておきますが、Canvaがこのような取り組みを始めたのは初めてではありません。Cursor、Bolt.new、Lovable、Replitといったスタートアップ企業は、ユーザーがアプリケーションをスムーズに作成できるようにすることで、多くの顧客と注目を集めています。それでもCanvaは、マーケティング資料からウェブサイトまであらゆるものをデザインできるサービスという、より幅広いセールスポイントを補完する機能として、こうした機能をソフトウェアに組み込むことに意欲的です。

Canvaは写真編集ソフトにもAI機能を追加しています。例えば、写真の不要な部分をポイント&クリックで修正できるツールや、照明やレイアウトを考慮した背景生成ツールなどです。これらの機能群は、Adobe Photoshop、Adobe Lightroom、Pixelmator(昨年Appleに買収された)といったツールとの競争を有利に進めるためのものと思われます。
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Canvaは昨年、シングルサインオンやアクセス管理ツールなどの機能を備えた、より大規模なチーム向けのエンタープライズ向け製品をリリースしました。そして今、Canva Sheetsでスプレッドシート機能も加わりました。

Canva Sheetsには、通常のスプレッドシート機能に加えて、「Magic Insights」と呼ばれるツールが搭載されています。これは、その名の通り、シート上のデータから得られた洞察を可視化するツールです。また、「Magic Charts」と呼ばれる機能もあり、これは生の数値をブランド固有のグラフィックやロゴ付きのグラフに自動的に変換します。
同社によれば、Canva SheetsはHubSpot、Statista、Google Analyticsなどとの統合をサポートしており、ユーザーは簡単にデータをインポートできるという。
アーティスト対AIのジレンマ
Adobe、Canva、Pixlrといった企業は、自社のサービスにさらなる付加価値を加えようとしているかもしれませんが、デザインツールへのAIの導入は依然として懸念材料となっています。アーティストは、自分の作品が許可なくAIモデルの学習に利用されることを懸念しているだけでなく、クリエイティブなデザインの仕事にも深刻な脅威が及んでいます。
それでも、アダムス氏はこれを AI と創造性の衝突とは見ていません。むしろ、この分野における成長とチャンスの瞬間だと考えています。
「AIの登場により、デザイン、製品管理、エンジニアリング、マーケティング、営業など、あらゆる専門分野で様々なツールが統合され、私たちの仕事はすべて変化するでしょう」と彼は述べた。「それぞれの仕事が変化し、AIツールの助けを借りて適応していくでしょう。私たちはそこに大きなチャンスを見出しています」とアダムズ氏は語った。
こうした変化は、大方の予想よりも早く訪れるようだ。今月初め、同社はテクニカルライティングスタッフの一部を解雇した。これは、共同創業者が従業員に対し、可能な限りAIアプリを使用するよう要請したと報じられてから9か月後のことだ。しかしアダムズ氏は、これらの解雇は同社が開発中のAIツールとは関係がなく、組織再編の影響だと述べた。